グロッシュラー grossular Ca3Al2(SiO4)3 
〜 アンドラダイト andradite Ca3Fe2(SiO4)3
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n=1.734〜1.887。屈折率はアンドラダイト成分に富むと高まる。一般にざくろ石は等軸晶系だが,グロッシュラー〜アンドラダイト固溶体は6配位のサイトでAlとFe3+が秩序配列するため正方晶系・斜方晶系・単斜晶系などの対称になり,1次の灰〜白程度の干渉色を示す場合が多い(さらに褐色がかった異常干渉色も見られることもある)。なお,その光学的正負・光軸角はまちまちで,同一粒子内でも部分で異なる場合が少なくない。
ただし,いずれも多色性はない。

色・多色性:
アンドラダイト成分に乏しいものは無色,アンドラダイト成分に富むと無色以外にやや褐色や緑色などを帯びることもある(いずれも多色性はない)。ただし,その着色原因はFeによるとは限らず,TiO2を数wt%以上含むと褐色が強く,SnO2を含む(数wt%程度まで)と緑色が強くなる(※アンドラダイト成分に富むと,Ti・Sn・Zrなどを含み組成変化が著しくなる傾向がある)。なお,アンドラダイト成分に富むものは組成変化以外に,わずかに酸素原子が欠損し,その空孔に電子が捕捉されることで濃褐色になっていることもあり,これはチタンざくろ石とまぎらわしい(右の画像)。
一方,グロッシュラー成分に富むものはそのような組成変化は少ないが,Oの代わりに幾分OHが含まれ,それはハイドロクロッシュラーといい,ロジン岩などに産し,人工物ではセメント中に生成している場合がある。

スカルン中のTiを含まない濃褐色のアンドラダイトで,無色部分と累帯構造をなす(平行ニコル)。


へき開:認められない。

双晶:認められない。

累帯構造:スカルンではAl⇔Fe3+の置換で著しい累帯構造をなす場合が多く,アンドラダイト成分に富むと屈折率が高まり,平行ニコルで累帯構造の境が無色の線状で認められる(ステージ下の絞りを絞るとわかりやすい)。またアンドラダイトは緑色や褐色を帯びることがあり,平行ニコルでの色の違いだけで累帯構造が認められる場合も多い。そして上記のように,6配位サイトでのAlとFe3+の秩序配列により,正方晶系・斜方晶系・単斜晶系などになり,クロスニコルで1次の灰〜白程度の干渉色を示す場合が多く,その干渉色が細かい縞状の累帯をなすこともある(同一粒子内でも部分により消光角が異なることも多い)。またその結晶中心は消光状態で認められる]型の分域構造をなすこともある。この6配位サイトでのAlとFe3+の秩序配列は結晶成長の過程で起こるものであり,長石類のAlとSiの秩序配列のように温度低下で起こるものではない。
ロジン岩中のものはグロッシュラーや若干水分を含むハイドログロッシュラーのことがあり,Feに乏しく,無色で,粒子が細かく累帯構造はほとんど見られない。


産状

スカルンの主要鉱物で,その接触部近傍ではグロッシュラー成分に富むものが多く(肉眼的にはベージュ色でやや緻密),主にケイ灰石を伴いスカルン形成初期にできたものである。接触部からやや石灰岩寄りに離れた部分ではアンドラダイトとの中間成分〜アンドラダイト端成分の場合が多く,黄銅鉱などの硫化物や透輝石〜灰鉄輝石などを伴うことも多い。

ロジン岩中にはグロッシュラー端成分に近いものが産し,斜灰れん石・透輝石・ぶどう石などと密雑した無色の微粒集合体で
,平行ニコルではもやもやと濁ったように見える。若干水分を含むハイドログロッシュラーの場合もある。



スカルンのグロッシュラー
  
Gs:グロッシュラー,Wo:ケイ灰石,Cal:方解石

スカルンにはグロッシュラー〜アンドラダイト系のざくろ石が多産するが,グロッシュラー成分に富むものは火成岩寄りにこのようにケイ灰石に伴い(右の画像のように肉眼的にはベージュ色〜淡褐色で,鏡下では無色),アンドラダイト成分に富むものよりやや細粒の傾向がある。

火成岩(花こう岩)のそばに発達するグロッシュラー(ざくろ石)とケイ灰石を主とするスカルン  
グロッシュラー成分に富むざくろはこのように火成岩寄りケイ灰石に伴ってベージュ色〜淡褐色の緻密集合体で産する傾向がある。




スカルンのグロッシュラー〜アンドラダイト系のざくろ石 
And:ざくろ石,Di:透輝石,Wo:ケイ灰石
スカルンにはグロッシュラー〜アンドラダイト系のざくろ石が多産し,6配位サイトでのAlとFe3+の秩序配列により,正方晶系・斜方晶系・単斜晶系などになり,クロスニコルで1次の灰〜白程度の干渉色を示す場合が多く,この画像のようにその干渉色が細かい縞状の累帯構造をなすこともある。干渉色を示す部分は1つの粒子でも消光角・光軸角・光学的正負が異なる場合がある。ややアンドラダイト成分に富むものは火成岩からやや離れたところに見られ,しばしば黄銅鉱などの硫化物を伴い,含まれるFe3+により褐色系・緑色系の色を示す場合もあり,Tiにより褐色,Snにより緑色を示すことも多い。また,アンドラダイトは Fe2+/Fe3+が低い変成流体(fO2が高い条件)でできるので,それと共生する単斜輝石は灰鉄輝石よりも,Fe2+が少ない透輝石になる傾向がある。




スカルンのグロッシュラー〜アンドラダイト系のざくろ石 
左:Gar:ざくろ石,Mt:磁鉄鉱
右:And:ざくろ石,Di:透輝石


アンドラダイト成分に富むざくろ石は,グロッシュラー成分との中間体に比べ,Ti・Zr・Snなどを含み組成変化が著しくなる。
左はTiO2を数%含むもので平行ニコルで褐色〜紫褐色のもの(なお,特にTiO2が多いものはチタンざくろ石といい,同時にZrO2を含むこともある)。
右はSnO2を1〜数%含むもので平行ニコルで明瞭な黄緑〜緑色のもの(Snは4+で6配位サイトに入る)。
これらの成分に富む領域は,そうでない無色〜淡色の部分よりもAlに乏しいため,6配位サイトでのAlとFe3+の秩序配列が起こりえず,クロスニコルでは白い複屈折を示さず,暗黒に近い。




ロジン岩化で生成したグロッシュラー Gro:グロッシュラー,Jd:ひすい輝石

蛇紋岩中に塊状で産するひすい輝石岩がロジン岩化作用により,部分的にグロッシュラーに交代されたもの(ひすい輝石の柱状結晶を交代する)。画像のものはやや粗粒だが,ロジン岩化で生成したグロッシュラーは斜灰れん石,ペクトライト,透輝石などと密雑した無色の微粒集合体で,平行ニコルではもやもやと濁ったように見えるものが多い。OH基を含むハイドログロッシュラーの場合も多い。